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. diane arbus . / Diane Arbus / ダイアン・アーバス

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彼ら、彼女たちの視線は
いつしか自分に突き刺さります


. diane arbus . / Diane Arbus


ダイアン・アーバスの写真には
不思議な魅力があります。

いや、「魔力」「妖力」と表現した方が
適切かもしれません。

彼女の喚起的で見る者を突き刺すような作品は
激しく心を揺さぶり、波立たせ、不安にし、時に不快にします。


実はアーバスの写真家としての活動は
10年にも満たない短いものです。

慢性的な鬱病に苦しみ、肺炎も患っていた彼女は
次第に精神的に追い詰められ、最後には自宅の浴槽で自殺してしまいます。


しかし、
アーバスは写真史に偉大なる功績を残しました。
「写真の持つ力」の再構築です。

彼女は鋭い知性とセンスにより「写真の力」を直感し
以降、献身的に愚直にそれを追求していきました。


アーバスは、
それまでの写真の基準ともいえる形式的で表面的な美しさには背を向け、
より個人的で内面的で精神的なものに価値を感じます。

そして彼女は「それ」を
人々が目を背けてきたフリークスの中に見出したのです。


性倒錯者、精神病者、奇人、双子、小人、両性具有者…

アーバスにとって彼らは
ぞれぞれが独自の神秘性を持った存在であり、

彼らの奥底にある、純真な愛や繊細さ、勇気、
そして苦しみや悲しさにこそ「美しさ」を感じたのでしょう。


自身も鬱病に苦しんでいた彼女の中に
フリークスも共感し共鳴し、また、興味を持ったのでしょう。

そこには自然と信頼関係が生まれ、
自身を曝け出し、お互いに心の奥底までを見つめ合います。

限界まで緊張と弛緩が入り乱れた
ギリギリの危険で危ういバランス。

そこでは
撮る者と撮られる者の境界線がなくなり
アーバスの意識が彼らに乗り移っているかの錯覚に陥ります。

そして彼らの目線は
(それはつまりアーバスの眼差しなのかもしれません)

いつしかカメラのレンズを突き抜け
見ている僕たちに突き刺さってきます。

そして自分の内面を見透かされた気持ちになった僕たちは
激しく心を揺さぶられ、波立ち、不安になり、不快になるのです。

写真の持つ魔力、妖力を感じる瞬間です。


20世紀を代表する写真家であり、
20世紀で最も挑発的かつ刺激的なアーティスト、
ダイアン・アーバス。

挑発的、刺激的でありながら
温かな包容力と眼差しがどこまでも優しい一冊。

永久不滅の名作。


Fortieth-anniversary Edition
Printed in Italy / イタリア製


Aperture
ISBN-9781597111744
24.5 x 29cm
Hardcover
Condition: New

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