2019/10/11 12:55


「とんでもなく普通」の風景から滲み出る
深いコクと奥行きのある味わいはまるでブルース




沖縄からこんにちは。
店長のやまうちです。


ウィリアム・エグルストン。
カラー写真のパイオニアとしてあまりにも有名ですね。


1976年、当時ほとんど無名だったにも関わらず、
MoMAにて「史上初の」「カラー写真による展覧会」を開催。

「白黒写真こそ芸術」という古くも強い固定観念があった時代に
「カラー写真」は様々な論争を巻き起こします。


が、しかし、
その後「カラー写真」は
「ニューカラー」という大きなムーブメントを引き起こしていきます。

おそらく、ですが
徐々に徐々に、若者たちの支持を集めていったんじゃないかなー、と思います。

なんだかロックが市民権を得ていく過程と似ていますね。


その「ニューカラー」のきっかけともなったのが
同じく76年に出版された本書「William Eggleston's Guide」

まさに
写真界に「狼煙を上げた一冊」と言ってもいいでしょう。

そんな、ある意味パンキッシュなエグルストンですが
作品はいたって穏やかにして慈しみにあふれています。







ウィリアム・エグルストンは
アメリカの南部、テネシー州メンフィスで生まれます。

アンリ・カルティエ・ブレッソンの「決定的瞬間」に感銘を受け
写真家を志したのは有名なエピソードですが

エグルストンの作風はブレッソンとはまったく異なり、
「決定的瞬間」どころか「とんでもなく普通」です。


ですが
この「いたって普通」の「なんでもない日常」の風景から
なんとも言えない哀愁のようなものが漂ってくるから不思議です。

あたかもブルースが
単調なリズムやシンプルなコード進行に
濃密な感情表現を込めているのと似ている気がします。


これが「南部の血」なのでしょうか。
「深いコク」というか、独特の奥行きが感じられます。





メンフィス、アラバマ、ミシシッピ…
典型的な南部の風景。もう「まぎれもなくアメリカ」です。

エグルストンは自分の生まれ育った南部の日常を
不思議なほど一定のトーンで、また、ちょっぴり絵画的に切り取っています。

そこにはまるで、空気までまるごと真空パックしたかのような
不思議なリアリティがあります。


それにしても
この「妙に懐かしくて」
「いつか見たことがある」感覚はなんなのでしょう?

行ったことも見たこともないのに。
この不思議な感情はなんなのでしょう?


やたらと「不思議」を繰り返してしましましたが
見れば見るほど「不思議」なんだから仕方ありません。







結局、ウィリアム・エグルストンが写しているのは
「人生の記憶」なのかな、って思います。


エグルストンの写真は
よく「消えゆくアメリカの原風景」と表現されます。


でも、原風景って
どの世代にも、どこの国にも、また、誰にでもあるものですよね。

「消えゆく原風景」とは
「消えゆく人生の記憶」なのかなと思います。


彼の写真に不思議な普遍性があるのは
見る人それぞれに「人生の原風景」を想起させるからなのではないでしょうか。


「とんでもなく普通」で「なんでもなかった日常」
「消えゆく自分の原風景」






あーあ。

なんだか濃いコーヒーと
濃いブルースが聴きたい気分だなぁ。




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